第47回 山陽小野田医師会健康ミニ講座 令和6年9月26日

村重医院   院長  村重 武美 先生

パーキンソン病は1879年にイギリスの開業医ジェームス・パーキンソンが初めてShaking palsy (振戦麻痺)という論文報告したのが始まりと言われています。その内容はふるえ、前傾姿勢、突進現象、小声症を中心に記述されていますが、我々が一番に思い浮かべる筋強剛(固縮)は記載されていませんでした。その後1888年フランスのシャルコー博士が、筋強剛を加え発表。この先人業績を称え、彼の名前を取ってパーキンソン氏病とし現在に至っています。

パーキンソン病とは脳の神経の一部が何らかの理由で変化して体の動き、例えば手が震えるなどの症状が引き起こされる病気です。何が原因で変化が引き起こされるかは現代の医学ではまだ解明されていません。

私が大学で教わってきた昭和中期以降は、喫煙家や飲酒家および不真面目な人はかかりにくく、真面目な人、人種差がある、職業は学校の先生と習った記憶があります。

現在は人種差なく、発症しやすい年齢は50歳〜65歳に多く、若い人にはあまりみられません。性別で見てみると男性と女性では若干女性のほうがなりやすいと言われています。

また、年々この病気に罹る人は増えていると言われています。昭和の時代は60〜120人/10万人が令和には200人/10万人と欧米並みまで増加しています。

パーキンソン病は運動機能が障害(椎体外路障害)される病気であり、4大徴候と言われる代表的な症状はいずれも運動機能の障害に関係しており、日常生活が著しく難しくなります。

4大徴候とは、全く動けない、もしくは極端に動きが鈍くなる無動・寡動、筋肉が固くなり体を自由に動かせなくなる筋強剛(固縮)、無意識に手足が震える振戦、まっすぐ立つことができなくなったり、押されたときにうまくバランスが保てない姿勢保持障害の四つの症状のことを指します。

無動・寡動は体の動きの遅さを意味しますが、本人、家族は年齢のためと片付けることが多いようです。

次に筋強剛(固縮についてです。これは筋肉が固くなるものでパーキンソン病では必ずと言っていいほど起こる症状です。

3つ目は振戦です。座っているときなどじっとしているときに手足にふるえが起こる症状で、なにかをしようとしたり、ある姿勢をとったりすると、ふるえが消失します。

最後は姿勢反射異常です。これは普通の状態と違って向きを変えたり背中を曲げ伸ばししたりすることができなくなる状態です。人や物にぶつかったり押されたりするとそのままバランスを失ってしまい倒れてしまいます。

1950年代後半に脳幹の線条体においてドパミンの低下がパーキンソン病で認められたと発表されてから、ドパミンの不足がパーキンソン病の主体と位置付けられ、レボドパ製剤の普及が始まり画期的に症状の改善を見ることができるようになりました。ドパミン受容体刺激剤、MAO-B阻害剤、COMT阻害剤など次々開発・販売されるようになってきましたが、すべてパーキンソン病の運動症状に対しての治療でした。1996年に楢林先生が非運動症状に注目、その後、レボドパ製剤による長期投与の副作用が問題となり、非運動症状や非薬物療法による治療が推奨されました。年を追うごとにパーキンソン病の治療の進歩は目を見張るものがあり、」薬物療法・非薬物療法の選択肢が増え、特にすり足、すくみ足、立ち眩み、立位保持、小声症、嚥下障害など理学療法・作業療法・言語療法を併用することによりレボドパ製剤の増量を防ぐことができ安定した日常生活を送るようになりました。

パーキンソン病の診断は以前と比べると脳神経内科でなくても容易になっており、理学療法士・作業療法士・言語療法士も市内医療機関、介護系施設に充実しており治療はしやすくなっています。患者さんにとっては良い環境と言えます。今後もさらに発展するものと期待します。