第52回 山陽小野田医師会健康ミニ講座 令和7年7月24日 

瀬戸整形外科クリニック 瀬戸 信一朗

65歳以上の約5人に1人が症状を有するとされる変形性膝関節症は、整形外科医にとっては最も身近で、同時に最も奥深い疾患の一つだと感じています。

外来診療をしていると、「もう年だから仕方がないですね」と、患者さん自身が膝の痛みを受け入れてしまっている場面にしばしば出会います。立ち上がりの痛み、階段のつらさ、夜間痛。痛み止めやサポーター、ヒアルロン酸注射などでは痛みが取れず、心臓の病気やご高齢などで手術を受けることもできず、痛みを我慢している方も多くおられます。

変形性膝関節症の基本は、言うまでもなく保存療法です。可動域の改善、筋力強化、体重管理、生活様式の見直し(段差・坂道は避ける、自宅内への手すり設置など)。これらはいずれも地味ではありますが、確実に膝への負担を減らし、症状の進行を抑える重要な要素です。特に体重と膝負荷の関係は、患者教育の中で繰り返し伝える価値があると感じています。体重1kgの増減が、歩行や階段動作時に何倍もの負荷差となって現れますので、減量だけでも痛みが軽くなる人は多数おられます。

2023年に健康保険適応となった新しい治療があります。保存的治療を行っても改善しない変形性膝関節症に対し、膝周囲神経を標的とした高周波治療、いわゆるクーリーフ(末梢神経ラジオ波)です。神経因性疼痛の概念を、変形性膝関節症という極めて一般的な疾患に応用した点は、従来の「関節そのものを治す」という発想とは異なるアプローチと言えます。

当院でも令和7年1月より本治療を導入しました。全例に著効するわけではありません(当院の治療成績では、100点満点で80点以上と治療に満足された方が約50%です)が、階段昇降や立ち座りといった日常動作が改善し、生活の質が向上し、趣味が楽しめるようになったと語られる患者さんも多く、これまでは手術しか方法がなかった患者様への有用な選択肢となると思います。

クーリーフは、膝関節内の痛みを生じる知覚神経を焼灼します。「神経を焼灼する」と言われると「大丈夫かな?」と思われる方もおられますが、関節に行く純粋な知覚枝のみを焼灼するため、筋力麻痺や皮膚のしびれは生じません。一度の治療で1-2年効果が持続し、1年たてば再度保険適応で治療を受けることもできます。

日帰りの局所麻酔で、片膝なら20分、両膝でも40分で行え、歩いて帰ることができますし、若い方であれば運転してご帰宅いただけます。副作用はほとんどなく、手術ができないご高齢の方でも安全に行うことができます。健康保険が使えるため、費用も抑えることができます。

膝の痛みは「年だから」と我慢せず、整形外科を受診してみてください。