山陽小野田医師会 第52回 市民健康ミニ講座 令和7年9月25日
小野田赤十字病院 廣田 勝弘
通院が難しくなったとき、“自宅で医療を受ける”という選択肢があることをご存じでしょうか。
これまで「入院するしかない」と思われていた場面でも、自宅で医療を受けながら生活を続けることができる仕組みがあります。それが「在宅医療」です。
在宅医療とは、医師や看護師がご自宅や施設を訪問し、診察や治療、看護を行う医療のことです。住み慣れた場所で、ご本人らしい生活を続けながら医療を受けることができます。
■ 在宅医療が必要になる場面
例えば次のような場面で在宅医療が選ばれています。
・脳梗塞や骨折の後遺症で歩行が難しくなった
・認知症が進み、通院そのものが負担となった
・心不全や呼吸器疾患で、少しの動作でも息切れする
・がんの治療後、自宅での療養を希望した
・退院後も点滴や医療処置が必要となった
・最期の時間を自宅で過ごしたいと希望された
■ 在宅医療でできること
在宅医療では、病院と同様に多くの医療を受けることができます。
・定期的な訪問診察(体調確認、薬の調整)
・血液検査、尿検査、血糖測定
・点滴治療(抗生物質、栄養、利尿剤など)
・超音波(エコー)や心電図による検査
・酸素療法、人工呼吸器の管理
・胃ろうや経管栄養の管理
・尿道カテーテル管理や排泄のサポート
・床ずれや皮膚トラブルの治療
・医療用麻薬を用いた痛みや苦しさの緩和
・訪問歯科による口腔ケアや入れ歯調整
・在宅リハビリテーション
・ご自宅や施設での看取り
■ 実際の在宅医療の例
・肺炎の高齢者の方が、入院ではなく自宅で点滴治療を行い、体力や認知機能の低下を防ぎながら回復した例
・がん末期の方が、飲み薬が難しくなった後も注射で痛みをコントロールし、ご家族に見守られて自宅で最期を迎えた例
・認知症の方が、病院では落ち着かないものの、自宅では安定して生活できるようになった例
・神経難病の方が、訪問看護やリハビリに加えてレスパイト入院を併用しながら在宅生活を継続している例
■ 在宅医療の良いところ
・住み慣れた自宅で安心して過ごせる
・通院の負担がなくなる
・ご家族と過ごす時間を大切にできる
・生活環境に合わせた具体的な支援が受けられる
・24時間365日、必要時には医療者と連絡・対応が可能
・入院に比べて生活リズムを保ちやすい
■ 注意しておきたい点
・急変時の対応は病院より時間がかかる場合がある
・CTやMRIなどの高度な検査は病院で行う必要がある
・食事や排泄など、ご家族の介護の協力が必要になる
・一人暮らしや重症の場合は調整が必要となる
在宅医療は、医師だけでなく、訪問看護師、薬剤師、歯科医師、リハビリスタッフ、介護職など、多くの専門職がチームとなって支えています。山陽小野田市内でも、地域の医療機関や訪問看護ステーションが連携し、在宅療養を支える体制が整っています。
費用は年齢や所得に応じた自己負担(1〜3割)となります。月2回の訪問診療の場合の目安は、1割負担で約7,000〜12,000円、3割負担で約21,000〜27,000円です。これに加えて薬代や介護サービス費などがかかりますが、高額療養費制度などにより負担軽減が図られます。
在宅医療を始めるには、まずはかかりつけ医にご相談ください。介護サービスを利用されている場合はケアマネジャー、また地域包括支援センターでも相談が可能です。入院中の方は、退院前から準備を進めることが大切です。
住み慣れた場所で、安心して過ごしたいという思いを支える医療が在宅医療です。
山陽小野田医師会では、地域の医療機関と連携し、安心して在宅療養ができる体制づくりを進めています。
これからの暮らしをどのように過ごしたいか、ご自身やご家族とともに考えるきっかけになれば幸いです。
まずは、かかりつけ医や地域包括支援センターへお気軽にご相談ください。