子供の病気について 1

子供の病気について 山陽小野田医師会

子供の病気について 1

ワクチンのメリット、アレルギーの遺伝について

こどもの病気についての座談会((2023年11月9日)

山口労災病院小児科部長 田代紀陸 先生

山口労災病院 小児科部長

田代 紀陸  先生

ワクチンのメリット

 

 ワクチンには、公費負担される定期接種と自費の任意接種の2種類のワクチンがあります。定期接種のワクチンは、国が接種するべきだと判断しているもので、お子様を病気から守るために、ぜひ接種することをお勧めします。

 日本は、これまでワクチン接種に関しては世界的に見ると後進国で、接種可能なワクチンが少なく、ワクチンギャップがありましたが、2010年ぐらいから、とても怖い細菌感染症である化膿性髄膜炎を防ぐための肺炎球菌ワクチンやヒブワクチン、冬場に流行するロタウイルス感染症のワクチン、子宮頸がん予防のためのワクチン、B型肝炎ワクチンなどが次々に認可され、ギャップが埋まってきました。ワクチンの効果は絶大で、こどもの化膿性髄膜炎は激減しました。また肺炎球菌は、肺炎や中耳炎の主な原因菌でもあるので、肺炎や中耳炎で入院するこどもも減りました。定期予防接種を受けるのは、お子様の権利なので、それを奪うことがあってはなりません。必ず接種するようお願いします。

 任意接種は、お金の負担が生じるのですが、特におたふくかぜワクチンは接種をお勧めします。おたふくかぜは、合併症として無菌性髄膜炎や難聴などをきたします。後天性の難聴の原因として最も多いことがわかっています。以前この地域でおたふくかぜが流行した時に両側の難聴をきたしたお子様がいらっしゃいました。残念ながら山陽小野田市は、宇部市のような補助はありませんが、1歳過ぎと年長さんの時の2回の接種をお勧めします。

 インフルエンザは、もうすでに流行しています。例年は年末から流行が始まるのですが、いつもと流行パターンが大きく異なり、今後の動向予測も困難です。インフルエンザワクチンは4価で、A型2種類B型2種類が含まれています。今季既にインフルエンザにかかった人もA型1種類のみに免疫ができただけで、他の型のインフルエンザにかかる可能性はあります。今後別の型のインフルエンザが流行するかもしれません。こどもはインフルエンザにかかると脳症などの重篤な合併症を起こすことがあるので、接種がまだな場合はこれからでもぜひ接種をご検討ください。

 新型コロナウイルスワクチンについては、現在のワクチンは、発症予防というより重症化予防のためのワクチンとしての位置付けです。こどもが重症化することは稀なので、基礎疾患のあるお子様は接種された方が良いでしょうが、健康なお子様に対しては、インフルエンザより優先順位は低いと思われます。

 

アレルギーの遺伝

 

 花粉症や食物アレルギーなどのアレルギー疾患が、そのまま遺伝することはありませんが、アレルギー素因、すなわちアレルギーになりやすい体質として遺伝します。

 アレルギー疾患は「遺伝因子」と「環境因子」の相互作用で発症するといわれています。山口大学小児科の長谷川教授が言われていましたが、北海道は杉がないので、スギ花粉症はなく、白樺花粉症が多いとのことです。環境因子が疾患発症に大きく関与する例です。

 環境因子を減らすことができれば、アレルギー疾患の発症を予防できる可能性があります。食物アレルギーについては、赤ちゃんの皮膚に湿疹があって、皮膚のバリアー機能が低下すると皮膚からアレルギーの原因となる食物が入り込んで感作される(その食物とアレルギー反応を生じる)と考えられています。逆に口から食べることでアレルギー反応を生じなくするように働きます。したがって、生まれてすぐから皮膚の状態を良好に保ち、離乳食の開始を遅らせずに進めることが食物アレルギーの予防になることがわかっています。