子供の病気について 2

子供の病気について 山陽小野田医師会

子供の病気について 2

今流行っている疾患は?どの感染症がどこで流行しているか?

こどもの病気についての座談会((2023年11月9日)

すがわこどもクリニック 院長 砂川新平 先生

すがわこどもクリニック 院長 砂川新平 先生

<今流行っている疾患について>

今年は夏頃からインフルエンザA型の大流行が見られます。インフルエンザは例年だと冬に流行する疾患ですが、今年に関しては夏からすでに流行が続いています。これまでのコロナ禍で3年もの間、インフルエンザがさほど流行しなかったため、我々の体の中にあるインフルエンザに対する抗体が低下していることが原因の一つと考えられています。

インフルエンザに加え、アデノウイルス感染症も大流行しております。アデノウイルスはいろいろな感染症を引き起こすウイルスで、特に今年は咽頭結膜熱(プール熱)が多く、これは日本全国でも同様です。学校保健安全法では咽頭結膜熱はインフルエンザと同じく、流行性が高い第二種に分類され、長い出席停止期間が設定されています(主要症状が消退した後2日間は登校禁止)。

新型コロナウイルスに関しては感染者数がかなり減ってきました。ただ、まだ一定の確率で陽性者が出るため今後も注意が必要です。冬になって気温が下がってくれば再流行する可能性が高いです。昨年夏から小児の新型コロナウイルス感染者が激増し、私のクリニックでもかなりの人数の方を診察しました。ただ、小児に限っての話ですが、コロナ感染者はインフルエンザ感染者に比べるとかなり軽症の印象を受けます。その点は高齢者とは異なると思います。

<検査のタイミングについて>

インフルエンザ、アデノ、新型コロナウイルスは、いずれも感染したかどうかを確認できる「迅速キット」があります。5〜15分程度で判定可能で便利なキットですが、検査するタイミングが重要です。特にインフルエンザ検査は、発熱などの症状が出現してから少なくとも半日以上は時間を空けて実施する方が無難です。熱が出てすぐに受診され、実際にインフルエンザの感染だったとしても、時間を空けないまま検査を施行したらかなりの確率で「陰性(インフルエンザではない)」と判定されます。時にはすぐに「陽性」と出る方もおられますが、それは稀なケースです。新型コロナウイルスは発熱などの症状が出る前からウイルスが体内で増殖していると言われ、実際に感染してから比較的短時間で陽性・陰性判定ができます。インフルエンザは症状が出てからウイルスが徐々に増殖していくため、このような時間差が生まれていると考えられます。なお、インフルエンザに罹患して高熱が出た時、解熱剤を使用しても検査結果には影響はありません。検査を待つまでの時間に、インフルエンザに罹患した方が高熱や感冒症状で辛そうにしているならば解熱剤使用をお勧めします。

<どの感染症がどこで流行しているか>

感染症に関しては「サーベイランス」と呼ばれる調査制度があります。さまざまな疾患が対象となっており、各種感染症の発生状況と感染者数の変化・増減を継続的に監視しております。特に私のような開業医の立場で診療している現場では、「どの幼稚園、保育園、学校でどの疾患が流行しているか」という流れを把握することが最も大切だと考えています。「あそこの保育園ではアデノウイルスの流行が多い、あそこの小学校○年生ではインフルエンザで学級閉鎖が起こっている」など、感染に関する情報をリアルタイムにいち早くキャッチし、診察効率を上げ、侵襲の強い検査をなるべく少なくするよう努力しています。実際に綿棒を鼻の奥に入れてグリグリする行為はこども達にとって大変苦痛で、ワクチン接種よりも嫌がっている印象を受けます。中途半端に検査すると発見できないこともあるため、比較的強めにグリグリします。私も何度も検査されたことがありますが、かなりの痛み刺激を伴います。