フレイルについて

フレイルについて 山陽小野田医師会

フレイルについて

健康寿命をのばそうー整形外科からみたフレイル予防―

第14回SOS健康フェスタにおける医師会講演

山陽小野田市民病院 整形外科部長 脇阪敦彦 先生

山陽小野田市民病院 整形外科部長

脇阪 敦彦 先生

日本は長寿国ですが、健康寿命においても世界1位で、2000年以降の平均寿命は延びていますが、健康寿命との差はあまり変わらず、介護が必要な期間が生じています。そのため、フレイルが注目され、高齢期に様々な要因が絡んで臓器が弱り、要介護状態や死亡など不良な結果が予想される状態とされています。フレイルの診断(1)には5つの基準があり、これにより高齢者の健康寿命の低下が明らかになります。介入や支援によりフレイルの状態を改善し、健康寿命を延ばすことが期待されています。65歳以上の年齢層でのフレイルの存在は増加しており、フレイルと診断された2年後にはその15%が要介護状態になる可能性があります。

フレイルは心身の衰えから生じる状態で、身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素の3つが影響します。そのうち身体的要素に焦点をあてると、ロコモや運動器不安定症、サルコペニアといった概念がかかわってきます。ロコモは筋肉・骨・関節・脊椎の弱化により移動能力が低下した状態を指し、診断には立ち上がりテストや2ステップテスト(2)が用いられます。サルコペニアは年齢による筋肉の減少であり、死亡リスクや要介護リスクの上昇が関連しています。サルコペニアの診断(3)にはふくらはぎの太さや握力、椅子立ち上がりテストが利用され、動く機会の減少が要因となります。サルコペニア肥満という状態もあり、筋力強化により基礎代謝が上がり、肥満解消が期待されます。

フレイルは主に高齢者に影響しますが、身体的な要因はロコモに近く、サルコペニアは筋肉の減少に焦点をあてています。ロコモは運動器官全体の弱化によるもので、若い人や子供にも発生する可能性があります。

フレイル予防の柱は栄養補給、孤独回避、運動。食事を摂り、かむ力を維持し、仕事やボランティアに参加し、運動トレーニングを行うことが重要となります。フレイルの身体的要因の改善は、サルコペニアと共通している部分があり、ロコモの対策とも一部が重なります。

フレイル予防では自身の状態に気づくことが重要で、外出や日光浴、短時間の運動、社会活動などを始めることが勧められます。

ロコトレはロコモ対策の筋力トレーニングで、片足立ちやスクワットなどの運動が含まれます。これらは転倒の危険を避けつつ行うべきです。

フレイル予防運動方法としては、ウォーキング、レジスタント運動、アクアエクササイズ、チューブトレーニング、インターバル速歩が挙げられ、腰痛や膝の痛みがある場合にも適用可能です。散歩だけでは筋力増強には至らないのですが、歩幅を広くし、足を高く上げる工夫で筋力増強に利用できます。運動を意識して少し負担を感じることが大切です。

毎日行える安全な運動を選び、けがのリスクを避けつつ運動内容を検討し、医師への相談を含め、適切な運動を行うことが大変重要です。

(1)フレイルの診断

表:改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)1)(Satake S and Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993)

項目

評価基準

体重減少

6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少
(基本チェックリスト#11)

筋力低下

握力:男性<28kg、女性<18kg

疲労感

(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
(基本チェックリスト#25)

歩行速度

通常歩行速度<1.0m/秒

身体活動

1.軽い運動・体操をしていますか?
2.定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

※ 5つの評価基準のうち、3項目以上に該当するものをフレイル(Frail)、1項目または2項目に該当するものをプレフレイル(Prefrail)、いずれも該当しないものを健常(Robust)とする。

※ 5つの評価基準のうち、3項目以上に該当するものをフレイル(Frail)、1項目または2項目に該当するものをプレフレイル(Prefrail)、いずれも該当しないものを健常(Robust)とする。

(2)ロコモの診断 

下のアドレスをクリックして下さい。

https://www.mhlw.go.jp/content/000656490.pdf

(3)サルコペニアの診断

指輪っかテストで自分でチャックしてみましょう。

サルコペニアは、ふくらはぎ周囲の長さを測る「指輪っかテスト」という簡単な検査法により自分でチェックすることができます。
ふくらはぎの一番太い部分が、両手の親指と人差し指で作った輪よりも小さく隙間ができれば、サルコペニアである可能性が高いと考えられます。指輪っかテストでは、体格にある程度比例する手の大きさを用いることで、ふくらはぎの筋肉量が体格に比べて維持されているかを自己評価できます。

指輪っかテストで隙間ができると、サルコペニアの危険度や発症リスクが高い可能性があります。

指輪っかテスト